第92回(2019年度)アカデミー賞、授賞式ハイライト・名珍場面集

オープニング・パフォーマンスはジャネール・モネイ

第92回アカデミー賞授賞式、オープニング・パフォーマンスを務めたのはジャネール・モネイ

主演男優賞にノミネートされていたトム・ハンクスの『幸せへのまわり道』にも登場する番組セットのドアを開けてステージに現れたしたジャネール。洋服を落とし、ボタンがハマらないなど緊張の面持ちで声を震わせながら歌い始めます。かぶっていた帽子をトム・ハンクスにかぶせて序盤パートは終了。

ノミネート作品の登場人物を模したダンサーが踊り始めた辺りからジャネールも本領発揮。圧巻の声量で観衆を魅了していきます。途中から登場する金ピか衣裳の男性はビリー・ポーター。

司会経験者コンビの毒舌

オープニング・パフォーマンス終了後に登場したのは、スティーブ・マーティンクリス・ロック。両者とも過去にアカデミー賞授賞式の司会を務めたことがあります。

スティーブ「なぜ今年は司会者がいないのか?」
クリス「Twitterだよ!」

※前年の第91回で司会を務めるはずだったケビン・ハートは、過去に同性愛者差別のジョークをツイートしていたことをメディアなどに蒸し返され、司会を辞退。他の複数の司会経験者に打診したものの拒否されたため、司会者不在での授賞式となりました。

しかし視聴率が上昇し、授賞式の評判も上々だったことから、第92回も前年に続き司会者不在での授賞式となりました。ちなみに第92回の視聴率は前年から激減し、史上最低を記録したそうです。

クリス「ジェフ・ベゾス(Amazon創業者)が来てるよ!」
スティーブ「素晴らしい俳優さんだね」
クリス「離婚したのにそれでも世界一の大富豪なんだぜ、『マリッジ・ストーリー』はコメディだと言ってたよ。ねえスティーブ、ベゾス氏に何か言いたいことある?」
スティーブ「ないね。荷物が時間通りに届いてくれればそれでいいよ」

スティーブ「92年の歴史でアカデミー賞も変化した。第1回では黒人俳優のノミネートはゼロだった」
クリス「そして今、2020年の黒人俳優ノミネートは1人だ」
スティーブ「そう! 驚くべき成長だよね」

松たか子、好位置

歌曲賞にノミネートされた『アナと雪の女王2』の主題歌「Into the Unknown」(日本語題は「イントゥ・ジ・アンノウン 心のままに」)。

1作目に続き主人公エルサの声を担当したイディナ・メンゼルが主題歌も担当。日本語吹替版では松たか子がエルサの声と主題歌を担当しました。

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レッドカーペットでは各国のエルサたちがドレス姿で勢揃い。右端に立った松たか子は艶やかな着物(=めちゃくちゃ高価な着物だということが翌日メディアで報じられてました)を披露。WOWOWのインタビューに応え「楽屋がエルサだらけで!」「どう緊張すればいいかわからない」など興奮の面持ち。

授賞式本番ではイディナ・メンゼルが1番を熱唱後、2番の冒頭で各国のエルサたちがステージ上にフェードイン。その1番手として松たか子が映り、イディナのすぐ隣りという好位置で最初の歌唱を担当。

サビ以降では全員がハーモニーを奏で、歌唱終了後は全員が満足そうな笑顔で手を取り合っていました。

完全サプライズでエミネム見参!

「音楽と映画作品は密接に繋がっている」というコーナーでは、数々の名作と、作品中で使われた印象的な音楽が次々に流されていきました。

そのパートの最後、『8 Mile』の名場面とセリフが映し出された後に場内が暗転し、『8 Mile』の主演でテーマ曲も歌ったエミネムが登場。場内が驚きで騒然とする中、エミネムは主題歌「Lose Yourself」をパフォーマンスしました。

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エミネムの出演はパフォーマンス予定者として事前に告知されておらず、一部の関係者しか知らなかった完全サプライズ。もし事前にバレたら出演をキャンセルつもりだったことも報じられています。

エミネムの自伝映画でもある『8 Mile』で、エミネムは第75回(2002年)アカデミー賞歌曲賞を受賞。しかし当日、エミネムは授賞式を欠席。

そのことを悔やんでいたらしく、今回のオファーを受けてエミネムはアカデミー賞授賞式に初登場し、18年越しで曲を披露することができました。

第75回授賞式で自分が受賞した当時の映像を添付し、エミネムは出演直後にツイートで自らの気持ちを告げています。

「もう1回チャンスがあればと。その機会を与えてくれたアカデミーに感謝。ここにたどり着くまで18年もかかってしまった。申し訳ない」

ブチギレあり熱唱ありプレゼンター大暴れ

美術賞のプレゼンターとして登場したのは、マーヤ・ルドルフクリステン・ウィグ。毎回何かやってくれる方々、今年は何をやってくれるのかと期待していると、不機嫌な様子。

「もう話せないわ」「怒っているの」「不機嫌なのよ」とマトモにスピーチを進められない2人。「ごめんなさい」と言いながら遂には後ろを向いてしまったかと思うと、振り返った2人はニヤニヤ。

「今のは、”演技”でした」
「そう、演じていたの」
「だってほら、今日は有名な映画監督さんがたくさん来てるじゃない?」
「コメディだけじゃないってところを見せておかないとね」

突然「今のは私のセリフじゃないのよ!」とブチギレて口論を始めたと思ったら、「はい、今のも演技です」

さらには泣き始め、「もうこれ以上は喋れない」と嘆いたかと思えば「ね、泣いてみたの、演技よ」

続く衣裳&デザイン賞もマーヤ&クリステンがプレゼンター。「もう1つあったみたい」「え、病院の予約があるんだけど」「いいから」

普通にノミネートを発表しようとしたクリステン。しかしそれを制止したマーヤ。「いきなり発表しないでよ」

「そうね、じゃあ歌でも歌いますか」とクリステンが呼応し、摩訶不思議なデュエットが始まります。

ウケを狙ったが再びの大炎上

視覚効果賞のプレゼンターとして登場したのは、ネコの着ぐるみをまとったジェームズ・コーデンレベル・ウィルソン

この2人は2019年公開の映画『キャッツ』に出演。しかしその『キャッツ』は俳優陣の顔を特殊技術VFXでネコに加工させたものの、その視覚効果が映画評論家や一部ファンから酷評され、劇場公開中にもかかわらず一部のVFXを作り直すハメになった、というドタバタ劇があったのです。

それを自虐ネタにした2人は「視覚効果は映画にとって何よりも重要、それを私たちほど痛感している人はいません」とシミジミ。

会場でのウケは上々だったのですが、ネットでは「ふざけてる」と感じた一部ファンが批判して炎上。

さらに、アメリカ視覚効果協会が2人の振る舞いを痛烈に批判。

「映画『キャッツ』の低調なパフォーマンスは視覚効果に責任があると示唆した」
「VFXをジョークにしたことは心から失望した」
「今回のパフォーマンスは侮辱的行為である」

などの声明を発表。『キャッツ』は正に踏んだり蹴ったり状態となってしまいました。

カズ・ヒロ、2度目の受賞

メイクアップ&ヘアスタイリング賞のプレゼンターはレイ・ノマーノサンドラ・オー

映画にとってメイクとヘアスタイリングはとても重要だ、ということを伝えるため、一例としてサンドラが「実は私、87歳なんです」

これを受けてレイも「そして僕はシャーリーズ・セロンです」(最前列で聞いていたシャーリーズ本人は苦笑)

さらにレイは映画『アイリッシュマン』で毎日メイク室に座り、メイクアップ技術の凄さを見ていたと語り、「ずっと座って見てたらジョー・ペシに、俺の椅子から失せろ、と怒られたよ」とジョークを放ちましたが、放送禁止用語Fワードを使用(公式動画ではその部分だけ音声が消されています)。

少々慌てたサンドラ、「ピー音で消されるわよ、ここはNetflixじゃないんだから」とたしなめ、気付いたレイは「ごめん、調子に乗った」と謝罪。

受賞したカズ・ヒロは、2度目の受賞。第90回(2017年)では『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』でゲイリー・オールドマンを特殊メイクにより激変させ、今回の『スキャンダル』ではシャーリーズ・セロンを特殊メイクで実在の女性キャスター、メーガン・ケリーに変身させました。

スピーチでカズ・ヒロは「シャーリーズ・セロンに心からお礼を言いたい、あなたは素晴らしい女優でありプロデューサーだ」とシャーリーズを見ながら語りかけ、シャーリーズは目をウルウル。

「あなたの勇気と情熱のおかげでヘアメイク業界は向上し、新たな表現方法を確立できた。あなたのおかげで我々は受賞できた。ありがとう」とカズ・ヒロは続け、シャーリーズは顔を覆って感激していました。

※カズ・ヒロは、第90回(2017年)の初受賞時は日本国籍の本名「辻一弘」名義でしたが、2019年3月にアメリカ市民権を取得し、帰化しています。

アメリカ国籍を取得したことについて本人は「日本での人間関係に悩んでおり、国籍を切ることで解決したかった」「個人としてのアイデンティティを確立するには日本国籍を捨てる方が良いと考えた」と説明しています。

この時はまだ余裕があったポン・ジュノ監督

前年(第91回)まで「外国語映画賞」というカテゴリー名称だったものが、この年から「国際長編映画賞」と名称変更。映画制作も多様化し、英語圏以外での環境も整備されてきた中、いつまでも「外国語」という名称は時代遅れなのではないか、というのが理由だそうです。

受賞したのは『パラサイト 半地下の家族』。韓国の作品がノミネートされたのは初めてで、受賞も初。

戦前予想で「この部門はパラサイトで間違いない」と各メディアが太鼓判を押していたこともあり、ポン・ジュノ監督も確信していたのか、受賞が決まった直後は余裕の笑みでガッツポーズ。プレゼンターのペネロペ・クルスからオスカー像を受け取り、大歓声の観衆に応えます。

「カテゴリーが変更され、新しい名前になって初めての賞を受賞できて嬉しいです」とスピーチを始めたポン・ジュノ監督は、出演者やスタッフの名前を紹介。

最後に「今夜は祝杯です」と語り、「明日の朝まで飲むぞ」と続けて笑いを取りました。

この時点ではまだ余裕があったポン・ジュノ監督。この後、監督賞、作品賞と立て続けにビッグ・サプライズを引き起こし、観衆だけでなく監督本人もパニックとなっていきます。

エルトン&バーニーの黄金コンビ受賞

歌曲賞のプレゼンターは、ブリー・ラーソンシガニー・ウィーバーガル・ガドットの女性ヒーロートリオ。

受賞したのはエルトン・ジョンの自伝映画『ロケットマン』のテーマ曲「(I’m Gonna) Love Me Again」。作詞作曲コンビ、エルトン・ジョンは2度目の受賞、バーニー・トーピンは初受賞でした。

受賞発表直後、天を仰ぐエルトン、奥様とキスをするバーニー。映画『ロケットマン』はエルトン&バーニーの成長物語としても描かれています。

先にスピーチを始めたのはバーニー。「彼とこの場所に立てるなんて言葉がない。53年間、休まず曲を作り続けた。遂に報われたよ」

交代したエルトン、「短めに話すよ」と言いながら感情が昂ぶり饒舌に。「バーニーは良い時もダメな時も常にそばにいてくれた」と相棒に感謝。映画で自身を熱演してくれたタロン・エガートンの演技も絶賛。

最後は「愛しい子供たちへ、パパは愛してるよ!」という言葉で感激のスピーチを終えました。

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最多ノミネートは『ジョーカー』の11部門。最多受賞は『パラサイト 半地下の家族』が作品賞や監督賞など4部門を受賞しています。『1917 命をかけた伝令』が3部門受賞で続きました。

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