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30年ぶりの司会者不在
授賞式の司会は当初ケヴィン・ハートが発表されていたものの、過去のSNSにてLBGTに関するジョーク発言が差別的だと問題視された事を受け、アカデミー賞に悪影響を及ぼすことを危惧したケヴィン自ら司会辞退を発表。
これを受けて過去の司会経験者たちに打診したものの全て断られたらしく、最終的には司会者なしでの授賞式となりました。司会者不在の授賞式は第61回(1988年度)以来、30年ぶりとなりました。
クイーン降臨!
故フレディ・マーキュリーがヴォーカルを務めたイギリスのバンド、クイーンをテーマとした作品『ボヘミアン・ラプソディ』がこの年に複数ノミネートしていたこともあり、オープニング・パフォーマンスではクイーンのメンバーが登場。
結成時からのメンバーであるブライアン・メイ(ギター)、ロジャー・テイラー(ドラム)に加え、2012年から活動を共にしているアダム・ランバート(ヴォーカル)の3人が、「ウィ・ウィル・ロック・ユー(We Will Rock You)」「伝説のチャンピオン(We Are the Champions)」の2曲を披露しました。
3人のコメディエンヌが盛り上げる
クイーンのパフォーマンス後、最初に登場したのは、(立ち位置左から)マーヤ・ルドルフ、ティナ・フェイ、エイミー・ポーラー。この3人はアメリカの人気コメディーバラエティ番組「サタデー・ナイト・ライブ」に出演していた関係でもあります。
「私たちは司会者ではありません。でも明日の朝刊を見た人は、私たちが司会者だったと勘違いするかもしれませんよね」とティナが語り、写真撮影用にポーズを取る3名。
その後も軽快なトークで笑わせ、マーヤはレディー・ガガの曲を熱唱するなど、授賞式の冒頭を盛り上げてくれました。
ウサギ落ち着け
衣裳デザイン賞のプレゼンターとして登場したのは、メリッサ・マッカーシーとブライアン・タイリー・ヘンリーの2人。
裾の長いゴージャスな白のドレスで登場したメリッサは、大きな帽子を脱いで涼しい顔。しかしながら手元ではチョコマカと忙しく動いているウサギ。
「リアルで繊細な衣裳は、決して物語を邪魔などしないのです。とても繊細なのです」と語るメリッサ、しかし手元のウサギが説得力ゼロに。
いよいよ受賞者の発表。しかしウサギが邪魔で封筒を開けられず苦戦するメリッサ。ブライアンが手伝おうとするも意地で開封するメリッサ。
衣裳デザイン賞を受賞したのは『ブラックパンサー』のルース・カーター。彼女は3回目のノミネートで初受賞。最初のノミネートは1992年の『マルコムX』だったので、28年もの歳月が遂に報われた瞬間でもありました。
「ここに来るまで長かったわ、あはは!」と笑うルース。最後は97歳の母親に「あなたこそ私のスーパーヒーローです」と感謝を捧げていました。
スパイク・リー、持ち上げられる
脚色賞のプレゼンターはブリー・ラーソンとサミュエル・L・ジャクソン。2人はマーベル作品やキングコング作品で度々共演しています。
受賞発表時、ブリーが開けた封筒を覗いたサミュエルは奇声を発して大興奮。親友でもあるスパイク・リーの名前を高らかに叫びます。
ステージに上がったスパイクはサミュエルと抱擁。背の小さいスパイクは高々と持ち上げられてしまいました。
オスカー像を受け取るなり、いきなり原稿を手にしてスピーチを始めるスパイク。最初に「ムカつく時計は止めておけよ」とスタッフを威嚇。スピーチが長くなり過ぎた際に、スピーチ終了を促すためスタッフが音楽を流すことを揶揄しています。
原稿を棒読みのスパイク。しかし内容は黒人差別や2年後のアメリカ大統領選挙についてなど、なかなか辛辣。最後は「正しいことをしようぜ! 良いシメだろ?」と叫んでスピーチを終えました。
海は怖い
作曲賞のプレゼンターとして登場したのは、テッサ・トンプソンとマイケル・B・ジョーダン。
「映画音楽は観る人の感情に影響を与えます」と切り出したテッサ。
流れたのはお馴染み『ジョーズ』の恐ろしい旋律。これを聴いたマイケル、
「あなた泳げるの?」とテッサが質問。「泳げるよ、なんで?」とマイケル。
涼しげにテッサ回答。
次はマイケルが「この曲は?」と紹介。流れたのは、こちらもアカデミー作曲賞を獲得した『タイタニック』のイントロ。
嬉しそうに微笑んだテッサ、
受賞者発表時、封筒の中身を確認したテッサは可愛らしくガッツポーズをして「イエス!」。受賞した『ブラックパンサー』は黒人の映画関係者にとって明るい希望でもあったのです。
ブラッドリーとガガのラブラブなパフォーマンス
歌曲賞ノミネートのパフォーマンスとして登場したのは『アリー/スター誕生』の主演男優ブラッドリー・クーパーと、主演女優レディー・ガガ。ブラッドリーは今作の監督も務め、テーマ曲はガガが作曲。劇中そのままにブラッドリーとガガが歌も担当しています。
ギターの旋律と共に観客席の最前列から手を繋いでステージに上がったブラッドリーとガガ。
最初に歌い始めたブラッドリーの声は音程がブレて上ずり、ド緊張の様子が明らか。もともとミュージシャンではない本職俳優であり、今作のためにヴォーカル特訓を重ねた、いわばミュージシャンとして新人同然の人がいきなりアカデミー賞授賞式で大観衆を前に歌うのですから、緊張しないほうがおかしい。
続いて歌い始めたガガはアカデミー賞授賞式で何度か歌唱経験があり、少々緊張しつつもブラッドリーの目から視線を離さず、堂々の歌唱。本職ミュージシャンの貫禄を見せます。
ハモリも見事に決め、最後は椅子に並んで座り、頬を寄せながら静かに歌い終え、そして至近距離で見つめ合う2人。劇中ならともかく、授賞式の場でもキスしてしまうのか! と見てて焦った人もいたのでは?
というのも、観客席の最前列にはブラッドリーのパートナーでロシア人モデルのイリーナ・シェイクが座っていたわけです。結婚はしていなかったものの、ブラッドリーとの間には2歳になる女の子もいました。こんなにラブラブな様子を目の前で見せられたら、いくら演出とはいえ心中穏やかではなかったかもしれず。
一方のガガもこの時、エージェントのクリスチャン・カリーノと婚約関係にあったのですが、授賞式の直後に婚約を破棄しています。まあガガの場合は以前に付き合っていた男性とも婚約、その後に婚約解消となっているので、今回も映画だけが原因かどうかは分かりませんけどね。
レディー・ガガ号泣&感動スピーチ
歌曲賞のプレゼンターはコンスタンス・ウー、そして『ブラックパンサー』で主演を務めたチャドウィック・ボーズマン。後にチャドウィックは『ブラックパンサー』撮影時から闘病中だったことが明らかにされています(2020年8月28日に逝去)。
受賞したレディー・ガガは3度目のノミネートで初の受賞。自分の名前が呼ばれた直後から泣いてしまい、隣席にいた妹にハグで祝福され肩をふるわせています(反対側に座っていたのが、前述した「ブラッドリーのパートナー」イリーナ・シェイク)。
その後に監督&主演のブラッドリー・クーパーともハグしたガガは壇上へ。
妹、そして両親に感謝の言葉を述べた後、ブラッドリーに語りかけるガガ。
その後、視聴者に向けて語り始めるガガ。
「この賞をもらうまで、私は必死で努力してきました。大切なのは『勝つこと』ではなく、『絶対にあきらめない』ことです」
「夢をあきらめず、情熱を失わず、戦い続けてください」
「何度試練が降りかかり、何度打ちのめされたとしても、その度に何回でも勇気を出して、立ち上がり続けてください」
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